Material Warning 素材特性
ユノアシリーズの素材レジンはフィギュアなどの模型、ハンドクラフトでもよく使われる素材です。通常のオモチャ等とは違いますので、以下の素材特性をご確認ください。
◆レジン素材特性(黄変)
・弊社で取り扱うユノアシリーズはウレタンレジン(通称キャスト、レジンキャスト)と呼ばれる「二液混合型無発泡ウレタンレジン樹脂」を使用しております(注1)
一般的に「キャストドール」と呼ばれるジャンルの素材は「ウレタン結合による樹脂」というその性質上、黄変(クリーム色・黄色・黄褐色に変色する現象)などの経年劣化を徐々にですが必ず起こす物質です。弊社ユノアシリーズに使用されているレジンは、何も手を加えないとおよそ10年ほどで表面がうっすらとクリーム味がかった黄色みを帯びる一般的なレジンを使用しています。
ユノアの黄変程度は美観や強度を損なうほど強いものではありませんが、気になるお客様はイベント出展時等で直接黄変サンプルをご確認いただけます。この経年における黄変は避けられない物ではありますが、以下の方法で管理することで劣化を遅らせることができます。
・直射日光など紫外線を含む強い光線や蒸気、熱に長時間晒さない(窓辺放置しない)
・防虫剤(ナフタレン等)や香料、揮発油、溶剤等を同梱して保管しない(アロマ禁止)
・パーツに付着している離型剤を洗浄してから保管する
・紫外線や各種化学物質、汗や油脂汚れなどにより経年劣化が促進されるので、UVカットスプレーなどで保護塗膜を整える
恐れ入りますが、経年劣化については基本的に交換等のアフターケア対象にはなりません。
現在販売中の主な肌色
・フレッシュ肌…基本的なクリーム色肌。黄変はするが保管方法等で美観を保てる。
・妖精肌…真っ白に近い薄いピンク色肌。黄変してもフレッシュ肌ほどのクリーム色にならず、白いアイボリー象牙色に近くなる。
・日焼け肌…茶色味のある褐色肌色。黄変しても分からない。
・モンスター肌(限定色)…水色に近いブルー肌、灰青色に近いパープル肌、元から黄色味のあるカーキ色肌、全てが黄変より強い色なので黄変が目立たない。
(注1)ウレタンレジンには発泡タイプもあり、これは日常生活におけるスポンジ(椅子の中のスポンジなど)全般。経年劣化で黄変した発泡ウレタンスポンジを皆さんもご存じだと思います。
◆レジン素材特性(有機溶剤)
・二液混合ウレタンレジンは有機溶剤(キシレン)を含んでいます
・含有する有機溶剤のほとんどは生産工場での生産硬化時に揮発しますが、若干量がパーツに残ります
・パーツに残存する有機溶剤・シンナー臭は、パーツの加工後の洗浄やスプレー塗膜で揮発を封じ込められます(換気必須)
・パーツカスタムで削る磨くなどした際には、内部のシンナーが揮発して臭いを感じることがあります(換気必須)
・レジンの削り粉などは紙を敷き作業を中断するたびに清掃、揮発飛散しないよう袋にまとめて燃えるごみで処分(換気必須)
・削り作業の際は粉じんマスクなどを装着されることを推奨します(作業時間の多い方は特に)
・当然ですが、舐める、口に入れる等は健康被害を起こすので絶対飲食しないでください
・有機溶剤やウレタンレジンに対して、化学物質過敏症やアレルギー性喘息などの症状が出る場合があります
・上記に該当される方はご購入をお止めいただくか、ご自分でのカスタムは行わず、弊社のユノア組立加工サービスをご利用ください
有機溶剤はプラモデルやフィギュアなどの模型塗料や用品、ハンドクラフト用品、マニキュアなどの美容用品等、様々な日常商品にも使用されています。そのいずれも、注意深く換気や火気厳禁などのルールを守れば安全に使用できるものと考えておりますが、ご自身で加工される際は万一の場合を想定しご注意ください。
ご本人やご家族にアレルギー症状が出やすい方、小さなお子様や小動物と暮らしていらっしゃるお客様につきましては、お問合せいただければ、商品と同じ素材の欠片をアレルギーテスト用にお渡しできます。また、弊社ユノア組立加工サービス・完成品セットなど、お客様の加工作業を伴わない商品もご検討いただければ幸いです。
◆レジン素材特性(気泡、繊維片、キャスト斑など)
・二液混合ウレタンレジンは基本的にA剤B剤と呼ばれる化学薬品液体を混ぜ合わせ、化学反応で硬化する工程を経たプラスチックです。
※ハンドクラフトで使用される一液/紫外線で硬化するUVレジンとは別のレジンです※
原液から硬化に至るまで有機溶剤を含み、換気や火気厳禁など厳しい管理が必要な素材である為、弊社ではウレタンレジンを取り扱う日本国内専門工場へパーツ生産を依頼しています。
ウレタンレジンは二液を混ぜる際に若干の気泡他を巻き込みます。工場では真空脱泡装置に入れて強制的に気泡を取り除いてからシリコン型へ注型(キャスティング)して樹脂硬化を待ち、型から取り出し、弊社へ納品されます。以上の製造工程から特性として
・二液を混ぜる際に、空気中の微細なチリ、ホコリ、気泡が混ざる(真空にしても完全には取り除けない)
・シリコン型には離型剤が塗布されるのでレジンパーツにも付着する(付着しすぎのものがたまにある)(注2)
・ウレタンレジンは硬化時に熱が発生してシリコン型を柔らかくしてしまう為、連続した型使用(開閉)の際に微妙な型ズレなど個体差が発生する(注3)
・レジンがシリコン型の中で硬化する際、軽い気泡は型の上部表面へ集まり、液より重いものは下部表面へ沈む(注4)
・シリコン型は静電気でチリを寄せやすい為、型表面からごく小さなチリや繊維片がホクロのようにレジンに同化する(注5)
・キャスト斑(マーブル)と呼ばれる白い部分が発生する場合がある(パーツが薄い、大きい、湿度や気温でも発生頻度が変わる)(注6)
以上の生産上の特性から発生するNGは全パーツ検品で除外されますが、ごく程度の目立たないもの(組立時に外部に露出しない内部、ウィッグで隠れる部分など)は良品またはB品として取り扱う場合がございます。また、下処理のレベルを越えた削りを行った際、表面に現れた埋没気泡・異物・キャスト斑はお客様の自己責任における改造による結果であり、不良品として対応いたしませんので予めご了承下さい。
(注2)お菓子のシリコン型にバターを塗り過ぎると焼き色に影響するのと同じです。検品で除外されます。
(注3)型ズレの段差をパーティングラインと呼びます。組立に支障をきたす大きすぎる段差は検品で除外されます。
(注4)パウンドケーキに入った気泡や蒸気は上部から抜けて、入れたドライフルーツは重すぎると底に沈むのと同じです。検品で除外されます。
(注5)チリ直径と同じだけ沈んで同化・硬化したものは彫らないと取り除けません。検品で除外します。
(注6)キャスト斑などを海外のドールファンは「birthmark(バースマーク、生まれつきのアザ、母斑)」「人間にもあるし、気にしない」ととらえている方もいらっしゃるそうです。目立つものは検品で除外します。
◆レジン素材特性(検品Bグレードという考え方)
上記のレジンパーツ製造工程上避けられない特性は、通常の「完全に不透明塗装をしてしまう模型パーツ」として使用する場合はほとんど問題になりません。
気泡やパーティングライン段差はパテで埋めて、斑やチリはサーフェイサーや色塗膜で隠蔽されます。
しかし、ドールパーツは顔のメイクをはじめ「不透明な塗料を塗らない・レジン色をそのままほぼ完成面にする」使用方法の為、平均して5割程度のパーツが検品NGとなり、その廃棄率は模型パーツに比べ劇的に高く、販売価格にも反映されてしまいます。(注7)
初期のユノアパーツ生産では一切の瑕疵を出荷NGとした為、良品率が10%程度だったり、1パーツだけが全て揃わなかったりなど不安定な生産でした。その為、2003年当時は全てのお客様へ平等にお届けするには「受注生産」「納品まで半年待ち」などを行わざるを得ず、お客様にはその印象が強く残る結果となり、また、運営は非常に厳しい状況でした。
イベント出展時に、比較的程度の良い検品落ちしたパーツから「直接ユノアに触って可動やパーツを確認できる試遊本体」をご用意したところ、お客様から「この程度の気泡なら販売したら?」「手軽な価格で遊び倒したい」などのご意見を頂戴しました。社内検討の結果「Bグレードという検品落ちパーツであることをご納得いただけるお客様にのみ、実物の確認をしていただき、通常グレード定価から割引いたBグレード価格で販売する」をスタートしました。
【定価販売Aグレード】…錬金術WEBSHOP、常時販売中
【割引販売Bグレード】
・錬金術工房の直接イベント出展時販売(当日販売、当日受付後日発送販売)
・まんだらけ取扱いBグレード新品販売(常時、取り寄せ通販可能)
・海外代理店Unoalchemy通販
Bグレードは以上の3か所で販売中です。大変有難いことにご好評をいただいております。ありがとうございます。
【Bグレード使用検品基準】
・ゴミ、気泡は、ウィッグで隠れる、または組立てた際に表面に出ない部位
・パーティングラインの段差は、整えてもプロポーションが大きく狂わない高さ
※全く差が無くなるまで削ることは前提にしていません。整える程度の認識です
・キャスト斑は無い、または面積が小さくて濃度が薄く目立つ位置にない
Bグレード本体には在庫上余っている検品OK良品パーツも含まれている場合がございますが、他の良品と混在しないようにBグレードパーツとして目立たない位置に印をつけております。印の詳細につきましては、Bグレードを装った海賊版を防ぐために明言しておりません。何卒ご了承ください。
現在は運営もより安定し、通常グレード商品(本体、フェイス他)を常時ネット販売や組立加工サービスの新設など出来るようになりました。販売初期の印象(ユノアは抽選でしか買えない、半年待ち等)を覆すべく努力してまいります。
(注7)レジンパーツは生産シリコン型を作るための「反転母型作成」や「複製50個ごとにシリコン型使い捨て」といった単価の高い少量生産方法なので、大量生産しても単価は下がりません。
大量生産して単価が下がるのは金属型(金型)を使用したABS素材などのプラモデルやソフビ製品です。
◆レジン素材特性(透明感を生かしたメイク塗装)
ユノアシリーズに使用しているウレタンレジンはメーカーベースレジン色「ホワイト」をベースにしています。これは何もせずそのままで透明感を持ったプラスチック樹脂に硬化します。模型では調色せずそのままレジン複製生産する場合もあります。ユノアシリーズではホワイトレジンにトナー(顔料・染料)を調合して様々な肌色を生産します。
トナーの含有量で透明度は変わりますが、基本色のフレッシュ肌、サブの妖精肌などは大きな透明度を保っています。日焼け肌やモンスター肌も発色の良さなどから塗膜とは違う透明感を持っています。
ドールメイクではこのレジン透明度を生かして、不透明な下地サーフェイサーや隠蔽塗膜を使わない事が多いようです。模型塗装ではなく、人間のメイク手順に近いドールメイク手順がここ20年ほどで一般的になりました。
【ドールメイク手順…(対応する人間メイク手順)】
1.洗浄…台所中性洗剤などでパーツについている離型剤を洗い落とす(顔の余計な汚れを洗う)
2.乾燥…(人間でいうところの化粧水や保湿は無い)
3.パーツ全体に透明なつや消しスプレー塗布…(メイク色や粉が乗りやすい肌のベース下地を整える、ベースコート)
4.パーツ全体にベース肌色、色味などをパステル粉や水性塗料で塗る…(粉ものメイクで肌色、血色の良さを整える)
5.目鼻口などのポイントをパステル粉、水性塗料や色鉛筆で描いていく…(色ものでポイントメイク、アイライン、シャドウ、チーク、リップ等)
6.パーツ全体に透明なつや消しスプレー塗布…(顔全体の色味が落ちないように押さえる、トップコート)
7.透明つや消しスプレーで全体がマットになったので、唇やまぶたなどに透明グロスメディウム等を塗る…(グロスリップでつやを出す)
手順1.の前にシャーペンなどでメイクの方向性(眉やアイライン、下まつ毛の量や形)をテストで描いてみると雰囲気がつかめて分かりやすく、パーツに汚れが残らず洗って消せます。
手順2.人間とは逆で保湿しません。洗浄後は手の脂などがパーツに残らないようにして乾かします。
手順3.レジン色が既に完璧な肌色としてあるのでコンシーラーに対応するものは塗りません。プラスチックが平滑で粉が乗らないのをつや消しスプレーでザラザラにします。
手順4.と5.は逆にやっても大丈夫です(ポイントメイクしてから、全体の肌色を整えるなど)また、メイク部分ごとにつや消しスプレーをかけて定着させながら進めることもできます。
※人間は肌のムラや傷を隠す補正をしますが、ドールは既に肌色が均一完璧なので逆に「メイクではない肌色味(ピンクや茶)」を薄く顔の端(額、耳、顎)や陰になる部分(鼻の穴、小鼻の脇)にごくわずか入れると全体の印象が生き生きとします。
手順6.全ての色味を乗せ終わったら最後のつや消しスプレー塗布をします。
手順7.水性アクリル絵の具の透明グロスメディウムを塗る。人間用のグロス、化粧品などは塗らないでください。レジンは油脂などで劣化黄変します。
ドールメイクには水性絵の具(水で濃度が変えられる、シンナーなどの薄め液を使わない、油性ではない)塗料を使うと手軽で安全です。つや消しスプレーを塗布後は、アクリル絵の具を筆でアイライン、リップ塗り、色鉛筆で下まつ毛や唇のしわなどペンシル描き、粉にしたパステルをアイシャドウ、チーク、リップ、肌トーンにブラシ塗りができます。
透明のつや消しスプレーは色々ありますが、模型用品全般に使用される「GSIクレオス Mr.スーパークリアー UVカット つや消し スプレー 170ml ホビー用仕上材 B523(GSIクレオス)」がおすすめです。
スプレー缶などは、通常ゆうパック発送ができないので錬金術工房webshop通販では取り扱っておりません。
以上がレジンの透明感を生かした基本的なメイク方法です。
ちなみに錬金術WEBSHOPでの完成品本体「組立加工サービス」は、この手順でいうところの「手順1.~7.」全てに加えて「まつ毛装着」が行われています。
◆レジン素材特性(柔らかさ)
ウレタンレジンパーツは二液混合で硬化するプラスチックですが、その硬さは一般的なプラスチックよりも柔らかいものです。その特性から、カッターやデザインナイフでの削り、紙やスポンジのヤスリでの磨き、熱湯や温度を高くした状態での変形ができます。
ユノアパーツを好みの目の形に削ったり、顎先や眉モールドを削り落としたり、柔らかくして指やエルフ耳を少し曲げたりできます。加工がしやすいカスタム自由度メリットもありますが、削りや研磨の際は有機溶剤をまだ含んだレジン粉が出るデメリットもあります。換気や粉ゴミのお取り扱いには十分に注意してください。
熱湯や温度を高くした状態での変形はレジンパーツの組み合わせ(顔と後頭部の合い)を修正するのにも使えます。メイクや塗装をする前に行ってください。
1.70~90℃程度のお湯を用意する
2.フェイスパーツがすっぽり入る小さな容器に上記のお湯を入れて、フェイスパーツを5~10秒ほど沈めて温める
3.温まって柔らかくなったフェイスパーツを取り出す※火傷にはご注意ください
4.すぐ後頭部にはめこんで、冷めるまで放置する
この加工でお手持ちの後頭部にぴったり合うフェイスパーツになります。
メイク済の顔の組み合わせがキツイ場合は、フェイス耳裏の溝を中心にドライヤーなどの熱風で温めて柔らかくしてから後頭部へはめ込んでください。また、フェイスパーツと後頭部を繰り返しはめ込む事でも、組み合う凸部が凹み、削れて、フェイスのはめ込みが楽になります。
レジンパーツは上記の生産方法を理由とした特性から、個体差、寸法誤差が生じますが、加工などが行えない、自信がないといった場合は一度お問い合わせください。
以上の素材特性をご理解の上で「それでも他の素材では得られない透明感、質感、塗装メイクなどカスタム加工の楽しみからユノアが欲しい」という方へ、弊社は商品を販売させていただきます。